明治12年。
この年は荒城の月で知名度の高い滝廉太郎が生まれた年として知られていますが、青森県弘前市では一つの旅館が誕生した年でした。
その旅館の名前は「石場旅館」です。
この石場旅館は明治12年に現在の弘前公園の近くで誕生。
その後日清・日露の両戦争や世界恐慌、第二次世界大戦、高度成長期など激動の日本の時代とともに生き残り、現在でも旅館の増改築はされていますが、明治時代の歴史の趣を残した旅館として人気を博しています。
今回は創業140年以上経過した「石場旅館」の店主にお話を伺うことができましたので、余すことなく石場旅館の魅力についてお伝えしていきたいと思います。
登録有形文化財に指定された「石場旅館」
石場旅館含め、青森県弘前市内の国指定登録有形文化財は、旧第八師団長官舎・旧弘前無尽社屋・旧藤田別邸・旧制弘前高等学校外国人教師館など7つあります。
この国指定登録有形文化財に「石場旅館」が登録されたのは平成23年。
なぜ「石場旅館」を登録有形文化財へ申請することになったのでしょうか。
その理由には、「石場旅館」の館長の思いが強く反映されています。
石場旅館の館長は元々東京で仕事をされていたときに、石場旅館の館長として跡を継ぐことになりました。
館長が東京で仕事をしていた頃、日本は建物を壊して、あたらしく建てたりを幾度も繰り返しており、館長は景観が崩れていく姿に憂慮していたそうです。
そして弘前に帰ってきた際にも弘前らしい姿が少なくなっていることに大きな懸念を抱いていました。
そんな中、「石場旅館」へ泊りに来たフランス人観光客からの一言が国指定登録有形文化財へ申請する大きなきっかけの一つになったそうです。
フランス人観光客の方が「石場旅館」へ宿泊した際に「ここの景観は素晴らしいけど、日本の観光地は建築物が近代化されていて、景観と建築物がちぐはぐになっている」と言われたそうです。
このフランス人観光客の方の一言が後押しになって、国指定登録有形文化財へ申請することになります。
「石場旅館」は国指定登録有形文化財へ認定される前から多くのお客様に喜ばれる旅館として知られていましたが、平成23年に国指定登録有形文化財へ認定されたことにより、「石場旅館」はさらに多くの方に知られ、多くの方が「石場旅館」へ訪れるようになったそうです。
そんな「石場旅館」が長く愛される理由は「石場旅館」のコンセプトと独自のサービスが起因となっています。
一体どのようなコンセプトと独自サービスで「石場旅館」はお客様を喜ばせているのでしょうか。
ここからは石場旅館の魅力についてお伝えしていきたいと思います。
石場旅館の魅力その1:お客様を喜ばせるコンセプト
明治12年から青森県弘前市で開業し、今年で創業から140年以上経過している老舗の「石場旅館」。
現在も多くの観光客が日本国内のみならず、海外からもいらっしゃるほど人気を博している旅館ですが、「石場旅館」の人気の秘密の一つとして旅館のコンセプトがあります。
「石場旅館」のコンセプトとはいったい何でしょうか。
それは二つあります。
まず一つ目に「石場旅館」を通して、日本の伝統を身近に感じてもらうことです。
例えば、石場旅館内の正面入り口の太鼓橋は明治に開業された当時の建物をそのまま保存し、現在でも使用しています。
また石場旅館内にある大きな柱時計は開業当時から明治時代から現在に至るまでずっと時を進めてきた時計です。
このように明治から続く旅館の建物を保存することで、石場旅館に宿泊する方は明治時代の風情を思う存分感じることができます。
そして二つ目の石場旅館のコンセプトは、お客様と密接にコミュニケーションをとることです。
お客様と近づきすぎず、離れすぎず等間隔で接客を行うため「石場旅館」へ泊った多くの方が、リピーターとなって何度も宿泊しに来るそうです。
このようなコンセプトの元140年以上多くのお客様に親しまれ、現在でもたくさんのリピーターが宿泊される「石場旅館」ですが、人気の秘密はコンセプトだけではありません。
「石場旅館」の魅力その2:地元・弘前の方が知っている情報を提供
「石場旅館」では他のホテルや旅館では実施していない、とっておきのサービスをお客様へ提供しています。
そのサービスの内容は、「石場旅館」に宿泊した方へ弘前市内の情報を無料で提供することですが、どのような形でサービスを提供しているのでしょうか。
まず石場旅館に宿泊されているお客様とコミュニケーションをとった際、石場旅館に宿泊される方がどのような情報を欲しているのかをリサーチ。
そして宿泊される方から得たリサーチ内容を元に、石場旅館の館長がお客様へ情報を提供しています。
どのような情報を宿泊されている方へ提供しているのでしょうか。
一例としましては石場旅館に宿泊された方が、「弘前市の地元民が通うような飲食店を紹介してほしい」と言われた場合、館長が知っている地元・弘前の方が通う飲食店やbarなどの情報を提供。
また地元弘前の郷土料理が食べたいとの要望があれば、弘前の郷土料理がおいしい飲食店などを紹介します。
更に宿泊される方が戦国時代好きな方なら、観光地として有名な弘前城を紹介するのではなく、岩木山の途中にある大浦為信〈おおうらためのぶ〉の居城であった大浦城〈おおうらじょう〉を観光地として紹介。
他にも弘前の観光ガイドマップに乗っていないような観光地や飲食店などを宿泊される方へ提供しています。
このように「石場旅館」の館長は弘前市の人々と弘前市内の街を宿泊されている方へ楽しんでほしいという思いから、お客様のニーズに合わせて、地元・弘前の情報を提供するサービスをしています。
その結果「石場旅館」へ宿泊される方は喜ばれ、関東地方や関西地方など国内の遠隔地のみならず、海外からのリピーターも「石場旅館」を訪れています。
このようににぎわっている「石場旅館」ですが、「石場旅館」の館長に今後の展望を伺うことができましたので、紹介したいと思います。
価値観が変化している日本において伝統的な建物のよりどころになりたい
「石場旅館」は明治12年から創業し、旅館のコンセプトを元に独自サービスを展開し、現在に至るまで宿泊された方を喜ばせてきましたが、今後の展開としてはどのようなことを考えているのでしょうか。
石場旅館館長「日本全国が新型コロナウイルス感染拡大により、日本人全体の価値観が変化しつつあると思っています。
例えば会社へ出社していたのが当たり前の世の中でしたが、現状では家でリモートワークを実施したことにより、会社へ出社しなくても仕事ができるようになりました。
これは従来の価値観とは大きく違った現状の一つだと私は思っています。
更に現在でも利便性を確保するため、伝統的な建物を壊し、新しい建物がどんどん大都会や弘前市でも建築され、その場の景観に少しずつ変化をきたしているのが現状です。
このような現状であるため、私は当旅館を通して弘前の伝統や景観を観光客へアピールすることで、日本の伝統的な文化を広めていきたいと考えております。」このように仰っていました。
弘前市は人口が大都市へ流出しているため、人口の減少が進んでいます。
そんな中、弘前の伝統的な建造物を保存することに努め、多くの観光客の方を喜ばせていこうとする考えはとっても素晴らしいものだと思いました。
弘前を訪れた際はぜひ「石場旅館」へ宿泊し、明治時代から伝わる歴史の趣を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は弘前市内にある「石場旅館」を取材しました。
余談ですが、「石場旅館」の館長と親しくなり、館長と趣味が合致すると、館長の都合が合えば特別なサービスを提供してくれます。
それは館長が宿泊客と一緒に遊んでくれるというサービスです。
遊びの一例としては、バックカントリーと呼ばれる観光客では中々楽しめないスポーツを一緒に体験させてくれるそうです。
このようなサービスも「石場旅館」ならではのサービスですので、体験されたい方は一度「石場旅館」の館長とじっくり話し合ってみるのもいいかもしれませんね。
次回もまた弘前市内にある宿泊地や飲食店、観光地などを取材して色々な情報をお届けいたしますので、お楽しみに。
旅館名:石場旅館
場所:青森県弘前市元寺町55〈弘前駅から車で7分〉
チェックイン:15:00
チェックアウト:10:00
TEL:0712‐32‐9118
HP:https://ishibaryokan.com/