【縄文人の宿】岩木山麓嶽温泉 1日1組限定完全貸切の宿

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三内丸山遺跡などを抱え、縄文時代への熱が高い青森県。
たくさんのJOMON(縄文)グッズがお土産物にもなり、北海道・東北の縄文遺跡群は世界文化遺産に登録されました。
一方、岩木山麓の名泉・嶽温泉(だけおんせん)にも、「縄文」の名を冠するユニークな宿があります。
1日1組の宿泊しか受け付けていない、その名も「縄文人の宿」に実際にお邪魔して、現在切り盛りしている寺島大祐さんと悦さんご夫妻にお話を伺いました。

津軽のじょっぱりオヤジの宿


「縄文人の宿」は、1993(平成5)年に営業を開始した、老舗の多い嶽温泉の中ではとても新しい宿です。
こぢんまりとしたこの宿を開業された先代の寺島忠義さんは、五所川原の出身。
岩木山麓に広がる雄大な自然、そして嶽温泉の湯に魅せられて、宿を開業されたのだそうです。

実は開業当時、現在のような縄文ブームはまだ起きていませんでした。
「縄文」を屋号にしたのは、この宿のおもてなしの方針からだったようです。
ヒゲを長々と蓄えた先代は、まるで仙人か縄文人かといった風貌で、おもてなしも豪快でした。
古代縄文人のように、囲炉裏を囲んでお客さま自身で焼いて食べてもらう料理、名付けて「狩猟囲炉裏料理」を提供していたのです。

先代は、なかなかの津軽じょっぱり(意地っ張り・頑固者を表す津軽弁)オヤジ。
くわえタバコでふらっとお客さまの中に混ざってみたり、自分の武勇伝を語ってみたり、お客さまと一緒に湯につかってみたり。
それが苦手と感じたお客さまも、なぜかそのキャラクターが恋しくなって再訪することもあったそうです。

先代は、お客さまがこの宿だから体験できること、過ごせる時間を楽しめるようなおもてなしをされてきました。
こうして縄文人の宿は、名物オヤジの一風変わった食事のできる宿として、またちょっと入りにくい謎めいた宿として人気になっていきました。

1日1組限定 完全貸切宿になるまで

開業当時は、木造の母屋に客室が並ぶ、こぢんまりとした一般的な湯治宿でした。
しかし開業して間もなく、大病された方や手術跡を気にされている方など、大浴場に入りにくいと感じるお客さまが居るということに気づいたのだそうです。
そこで、人目を気にせず家族水入らずで過ごせる風呂付き部屋を用意しようと、露天付き「離れの家(やかた)」を作りました。
当時は、母屋と離れ、合わせて最大5部屋にお客さまを受け入れており、賑やかな宿となっていました。

しかし、先代ひとりで切り盛りするのはなかなか大変だったようだと、二代目の奥さま悦さんが話してくれました。
「二代目である主人(大祐さん)は、料理人を目指し、フランスで修行していました。
しかし、帰国せざるを得ない情勢で、青森へ戻ってきたという経緯があります。
その後に先代が体調を崩し、宿を手伝うことになりました。」

先代と二代目ご夫婦、3人でなんとか回してきた宿ですが、先代が病に倒れたこともあり、一つずつ客室を減らし、現在は母屋で1日1組のお客様のみ予約を受けています。
夫婦ふたりでのおもてなしになること、そしてお客さまにとって我が家のように安心して寛いでもらえる空間にすることを考えての決断でした。
こうして、縄文人の宿は先代の遺志を継ぎながらも、新しさを取り入れた完全貸切宿として営業を続けています。

嶽温泉の湯を大切に守って楽しむお風呂

縄文人の宿は完全貸切宿なので、お風呂は男女に分かれていません。
露天風呂は無く、内湯1ヶ所のみ利用できます。


大きなねぷた絵が豪快に飾られた脱衣所から浴室を覗くと、味わい深い木造の浴槽が2つ
分けているのには理由があります。
「嶽温泉は、ひとつの源泉だけでなく、いくつもの源泉を引いています。
その源泉の割合で成分や温度が少しずつ変わってきますので、2つの浴槽で温度を変えています。」
悦さんは、そう説明してくださいました。

少し広めの浴槽がややぬるめ、小さい方が熱めで、交互に入浴することで効果的に体の芯まで温めることができます。
硫黄泉ですので、独特の香りはありますが、そんなに強烈ではないので、お子さんでも抵抗なく入れそうです。

「最初は総ヒバ造りの浴槽でしたが、30年も経てば歪んだりひびが入ったりで、手直しを繰り返してなんとか維持しています。
つぎはぎのお風呂なんですよ。」
悦さんはそんな風に話されましたが、その修繕している部分も味わい深く、ダイナミックさだけでなく優しさも感じられるお風呂です。

お客さんが来るたびに、清掃して完全に入れ替えているためか、湯の花はふわっと軽め。
湯上がりは、肌がつるっとした感触で、湯冷めしにくく、体の内側が温まっていると実感できる良いお湯でした。

ダイナミックさと繊細さ 和洋折衷の囲炉裏端料理

元々先代が、古代縄文人のようにみんなで炭火を囲んで、食事を楽しんで欲しいと考えて提供していた「狩猟囲炉裏料理」。
二代目もその想いを継いできましたが、コロナ禍を迎え、皆で取り分けて食べるといったことが難しい時期がありました。

そんな中、様々な業界を支援するキャンペーンが次々に打ち出され、逆境に負けず新しい挑戦をしている県内の生産者さんの姿勢に勇気づけられたと悦さんは話します。
「あおもりの食の生産者さんが作り出す、地元産の食材を工夫して美味しく活かしていこうと考えました。」

先代が大切にしてきた炭火焼は続けつつ、料理人である大祐さんの和洋風の手料理も併せて提供するというスタイルを確立しました。
大鰐の炭焼き職人である三浦さんの白炭を使わせていただいています。
野菜も果物も魚介類も、この天候の変化の中、経験したことのない状況であっても、作って採ってくださっています。
炭焼きも同じです。
この貴重なものを大切に活かして、お客さまにも楽しんでいただけるようにしていきたいです。」

飲み物も、青森の地酒の飲み比べや、りんごジュース、シードル等青森県産を提供することで、丸ごと青森県を味わってもらうような食事となり、お客さまからも好評を得ています。

これからも 岩木山の恵みの湯と味を

先代が自分の想いを投影して作り上げた、独特の世界観を持つ縄文人の宿。
二代目の寺島さんご夫婦は、先代の思いは大切にしつつ、コロナ禍を経験したことも踏まえて変化させながら続けています。
「現在、1日1組4名様まででご予約を受けています。
夫婦ふたりで、お客さまがゆっくり過ごしていただけるおもてなしをするには、これが限界かなと考えてのことです。」

母屋には宿泊用の部屋がまだいくつかあり、もったいないような気もしますが、無理は禁物だと悦さんは話します。
「嶽の湯っこは、どの宿も同じだけの量を分け合って大切に使っています。
いつまでも永遠に同じ成分で同じ量が出てくれるとは限りません。
うちの宿に与えられた湯っこで、心も体もほぐしてもらって、楽しんでもらうためにも、人数制限は仕方がないかなと思っています。」

先代が集めた小道具や農具等が所狭しと並び、一見雑然としたようで懐かしさや温かみを感じさせる不思議な宿。
驚くお客さんも居れば、それが楽しいと喜ぶ方もいます。
「縄文人の宿に泊まったな、ということよりも、岩木山の麓で美味しいもの食べていい湯っこ入って星も見えて、なんかのんびりして楽しかったなと、岩木山に癒やされたなと思っていただけたら嬉しいですね。」

1日1組のみという狭き門、予約は電話のみということで、泊まるのが難しい宿ではありますが、岩木山の恵みを全身で感じるひとときが体験できる縄文人の宿。
ぜひ訪れてみてくださいね。

〇施設名:縄文人の宿
〇場所:弘前市常盤野湯の沢14
〇電話:0172-83-2123
〇営業時間:チェックイン15:00、チェックアウト10:00
〇定休日:不定休
〇公式:-
 ※ 嶽温泉旅館組合HP http://www.dake-onsen.com/jomon/jomon.html
〇その他:お問い合わせ・ご予約はお電話でのみ(電話対応可能時間:10:00~18:00)
 ※お客様対応等により出られないこともあるため、不在の場合は再度お電話ください。
 ※特徴のある宿ですので、予約時にご利用方法等の説明がございます。
  お時間に余裕のある際にお電話ください。

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