7月に入り、弘前のあちこちには、白い小屋が建ち始めました。
弘前市民なら、「今年もあの季節が来た…!」と思われることでしょう。
扇型の巨大な灯篭が短い弘前の夏を熱く燃え上がらせる、ねぷたの季節です。
今回は、弘前ねぷたは一体いつから始まったのか?など、ねぷたに関する歴史から現在の弘前ねぷたの定義についてご紹介します。
弘前ねぷたの始まりは謎だらけ?1700年代に始まったと言われる祭りの正体は実は眠気覚まし!

ねぷたまつりは、全国で行われている「眠り流し」という行事の一つが発展したものだと言われています。
眠り流しとは、夏の暑い中農作業をしていると襲ってくる睡魔を魔物に見立て、それを追い払う、というもの。
お隣の秋田県で行われる「竿灯まつり」も眠り流しの一つと言われています。
しかし、諸説あるようで、坂上田村麻呂が戦の際に敵をおびき出すために作った大きな人形が始まりだと言われていたり、津軽為信が作らせた大燈篭がきっかけだと言われていたり、さまざまです。
もっとも有力とされているのは、「燈篭流し」と「眠り流し」が融合したとされる説。
津軽為信が1722年に12の町会に「祢ふた流し」という燈篭を持って町内を練り歩く行事を命令したことで始まり、地域に定着していったとされていますが、始まってしばらくはお囃子や今では一般的な絵柄である三国志や武者絵というのは書かれていませんでした。
ここに「眠り流し」が融合し、大型の「ねふた」が生まれました。
江戸文化と経済が発展していくとともに、ねふたも大型化を繰り返し、ねふたに関するさまざまなお触れが出されてきました。
そして、現在私たちが知っている「ねぷた」の形へと整えられていったのは、1868年あたりからと言われています。
昭和に入ると、技術の発達によってろうそくのねぷたから電気によって光ったり動きがアシストされたりする仕組みへと進化していきます。
こんな歴史を持ち、長く続いてきた弘前ねぷたが多くの人に300年以上もの間親しまれ、そのままの形を保ってきたのにはどんな背景があるのでしょうか?
「弘前ねぷた保存基準」をわかりやすく解説!

「弘前ねぷた保存基準」とは、弘前ねぷた保存会によって定められたルールで、ねぷたの制作や運行に関する基準をまとめたものです。
ねぷたの歴史や伝統を守り、これからも弘前の重要無形民俗文化財として継承していくために、ねぷたまつり参加団体はこの保存基準に沿って活動しています。
まず、ねぷたの運行を見ていると、ある順番がどこの団体も決まっていることに気が付くと思います。
それは、ねぷた本体や囃子の並び順です。
運行責任者を先頭に「町印」と言われる団体の名前が入った小さな提灯を持っている部隊から始まり、「前ねぷた」と言われる小さめのねぷたの後に、主役の一番大きなねぷたとそれを引き連れる曳き手が続きます。
最後は連なった太鼓、笛・鉦(かね)の囃子部隊で締めくくられます。
ちなみに、鉦が笛の音をかき消すほど大きくてはならない、というルールもあります。
これが一つのねぷたの団体の基本形態です。

次に、ねぷた本体に目を向けてみます。
弘前ねぷた保存基準によると、ねぷたは大きく二種類に分かれます。
一つは「扇ねぷた」、もう一つは「組ねぷた」です。
「扇ねぷた」とは、箱型の「額」と言われる土台の上に、「開き」と言われる牡丹の花が描かれているパーツがあり、一番上に「扇型」が乗っかっているもので、皆さんが想像する弘前ねぷたの一番典型的なものです。
一番下の土台部分に当たる「額」に描かれている、「武者絵」ですが、実は進行方向を見ていなければならないというルールまであるのです。
そして、後ろには「見送り絵」、その絵額縁には「蔦」、「雲」が描かれていなければなりません。
また、「鏡絵」と言われる表の絵と「見送り絵」、その外側に描かれている「袖絵」、つまりねぷたに描かれているすべての絵がお互いに関連があることが望ましいです。
次に「組ねぷた」ですが、こちらはすこし複雑です。
まず、「扇型ねぷた」と一番異なる点は立体的な人形が台座部分に乗っている点です!
「額」と「開き」は同じですが、「板隠し」という四角い枠・「蛇腹」と言われる赤っぽい半円形の膨らんだ構造・さらに「高欄(角つき)」と言われる枠が乗っています。
トップの大きな人形に目が行きがちですが、少し目線を落として主役が載っている土台部分に目を向けてみると、それぞれの団体によって違いが出ていて面白いかもしれません。
その他にも、「見送り」と言われる後ろの部分、両脇にある「袖」という部分がすべて備わって「組ねぷた」は完成です。
実は、弘前ねぷたで一般的な扇ねぷたが登場したのはこの組ねぷたの後だとされています。
明治維新での資源の枯渇や経済的な問題から斬新な扇型ねぷたが普及していきます。
意外と厳密に決まっている部分も多いねぷたですが、毎年それぞれの特色を生かしたねぷたが町を練り歩きます。
今年、一番かっこいいねぷたはこれだ!賞はいったいどのねぷたに渡るのか一緒に予測しながら楽しもう!

実は、弘前ねぷたはさまざまな個性あふれるねぷたが町を彩るだけではありません。
ねぷたまつりの一日目と二日目が、弘前地域では「審査」と呼ばれていることはご存じでしょうか。
「ねぷたまつりコンテスト」では、桜大通りに審査員がおり、各団体自慢のねぷたに賞を贈るために目を光らせています。
「ねぷたまつりコンテスト」はただ単に一位、二位、とランキング付けをするわけではなく、それぞれの賞に名前がついています。
さらに、大型で派手なねぷただけが有利にならないよう、「大型の部」と「小型の部」に分かれており、大型ねぷたはさらに「扇」と「組」に分かれて賞が贈られます。
審査基準はとても明確。
「運行」、「構造・絵」、「囃子」、「印象」それぞれ10点の40点満点です。
基本的には、「弘前ねぷた保存基準」の内容がきちんと守られているか、その上で弘前ねぷたの伝統を大切にし、どんな工夫が施されているかが見られています。
「運行」では、運行形態の順番が守られていること、前の団体との適度な距離間などが詳しい審査内容です。
参加者の服装も審査対象です。
「構造・絵」はねぷた本体のバランスや描かれている絵の美しさを競います。
特に、扇ねぷたに関しては、鏡絵で「動」を表し、見送り絵で「静」を表現する、というギャップが評価されます。
「囃子」は、その名の通り、囃子のバランスがとれているか、揃っているか。
「印象」はほかの項目で審査しきれない部分についてです。
例えば、地域への郷土愛が感じられる工夫、子どもたちの参加による次世代への継承などです。
さらに、信号機や標識などと接触しないように、ねぷたをコントロールする技術も高得点を狙うためには必要なのです。
また、弘前ねぷたの多様性を失わないためにきんちゃくや、ほら貝といった近年使われなくなった道具の使用も奨励されています。
数多くある賞の中でも、多くの団体が狙っているのが「青森県知事賞」。
今年はいったいどのねぷたに送られるのでしょうか?
一日目と二日目の運行に分けて行われるこちらの弘前ねぷたコンテストの結果は8月2日の23時頃から発表されます。
みなさんのお気に入りのねぷたが入賞しているか、ぜひ結果もチェックしてみてください。

そして、なんと!
今年は観客の皆さんも弘前ねぷたコンテストに参加できることはご存じでしたか?
弘前ねぷたコンテストの観客賞には二つの部門があり、観客の皆さんが投票によって、賞が贈られる団体や制作者が決まります。
2025年から実証実験として取り組まれているこちらの観客賞ですが、今年は、「団体部門」と「本ねぷた制作者部門」の二つに投票することができます。
「団体部門」では、囃子や運行形態、パフォーマンスを総合的な視点で選びます。
各団体の掛け声から感じられる熱気や囃子のスキルが見どころです。
一体感や雰囲気の違いをぜひお楽しみください。
「本ねぷた制作者部門」では、ねぷた本体にフォーカスして審査します。
扇ねぷたであれば絵の美しさやバランス、組ねぷたであれば山車の迫力やこだわりぬかれた細部に注目!
こちらは団体の色は抜きにして、ねぷたをある意味アートのような感覚で楽しむことができる部門です。
投票方法は以下のリンクから投票用Googleフォームから。
投票期間は8月1日から8月6日となっていますので、お忘れなく!
投票結果は8月7日に公開されます。
なお、審査対象にならない特別参加と無審査の団体がございますので、間違って投票しないようにご確認ください。
〈特別参加〉弘前市役所ねぷた実行委員会、弘前自衛隊ねぷた協力会、弘前大学ねぷた実行委員会
〈無審査〉祭好会、認定こども園弘前みなみ幼稚園
まとめ
今回はねぷたの歴史、現在のねぷたとはどんなものなのかについてご紹介しました。
また、弘前ねぷたコンテストの審査ポイントや観客も皆さんも参加できる観客賞についてもご紹介しました。
弘前ねぷたは、短い弘前の夏をにぎやかに彩るお祭りですが、注目するポイントを変えるといくつもの楽しみ方ができます!
ぜひこの機会にねぷたについて深く知り、今年のねぷたまつりをより楽しみましょう!

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