【madeni】までにまでに 刺して縫って 丁寧に創り出す 優しいめご雑貨

「までに」は、津軽弁で「丁寧に」という意味。
実際に話す時には、ちょっとのばして「までぇにやってらの(丁寧に作業してるね)」といった感じになります。
そんな言葉を屋号として、こぎん刺しをアクセントにした、めご(=可愛い・愛らしい)雑貨を創る、宮城県出身の作家さんがいらっしゃいます。
今回は、madeniこと北嶋沙織さんに、色々とお話を伺いました。

仙台のベッドタウンから弘前へ


北嶋さんは、宮城県岩沼市出身。
日本三大稲荷のひとつとされる竹駒神社で知られる、仙台市のベッドタウンです。
「父がとにかくスキーが大好きだったので、物心ついた時にはスキー場で滑っていました。
太平洋側は雪が少ないですが、蔵王まで近かったので、贅沢なところで滑っていましたね。」

そんなアウトドア大好きな子どもでしたから、小さい頃は手芸などあまり興味が無かったそうです。
体を動かすのが好き、家から外へ出るのが好き。
今のお仕事と真逆に感じられますが、思い起こせば共通点もあるのだそう。
「これが好き!と思ったら、とことんそれだけに熱中できるのは、スキーもミシンも一緒のようです。」

高校まで宮城で暮らしていましたが、大学はお隣の山形県へ。
実はとても明確な将来の目標があったのです。
「養護教諭(保健室の先生)になりたいと思ったんです。
そのためにまずは看護師の資格を取ろうと思いました。」

無事に看護師の資格を取得し、大学も卒業。
4年間の学生生活の中で、働き方について考え、教員資格を取るために学ぶよりも、まず看護師として働こうと決めました。
そしてなんと、ご自身が生まれた病院に看護師として就職できたのです。

一方、当時からお付き合いしていたご主人の実家は弘前で、時々弘前へは遊びに来ていたのだそうです。
「まず、とにかく岩木山が素敵でした。
見ているだけで護られているのだと感じさせてくれる存在でした。
街も城下町らしさあって、魅力的な街だなって感じていました。」

親類縁者、友だちも居なかった青森県。
そんな青森が、遊びに行く場所から生活の場所になったのは、2017年4月のこと。
結婚を期に、退職して弘前へ移ってきました。
それまでハンドメイドとは無縁だった北嶋さんですが、この弘前移住から大きく方向転換していきます。

洋裁とこぎん刺し 出逢って繋がる人の縁




意気揚々と弘前へ引っ越して来た北嶋さん。
しかし、何をしていいかわからないことに、愕然とします。
車の運転は不慣れで、土地勘もない。
夫の理解もあったので、弘前の街に慣れるまで少しのんびり過ごすことにしました。
ところが、家事をひと通り済ませると他にやりたいことや趣味が無い。
そのことに心が沈みました。」

気持ちが浮上する最初のきっかけは、評判が良いので訪れたカフェ。
話上手なマスターといろいろ話すうちに、ご主人とマスターが同級生だったことがわかります。
「こんなことってあるの?と驚きました。」
自分から一歩踏み出してみると、不思議なご縁があるものだと実感した北嶋さんは、次に何か習い事をしてみようと考えます。

そこで浮かんだのが洋裁でした。
北嶋さんのお母さまが、お手製の子ども服を着せてくれるような方で、立派なミシンもお持ちだったのだそう。
どこかその記憶が、洋裁をしてみたいという気持ちに繋がっているのかもしれません。
そして調べた自宅近くの教室が、とても性に合っていたのだと言います。
「服飾系の学校で講師をされていた方で、作りたいものを作らせてくださいました。
まずは自分の体を採寸してもらい、自分のための型紙を作る。
細かくて大変な作業でしたが、意外と楽しめる自分に気付きました。」

そして、冬。
更に運命的な出逢いがありました。
「それまでに雑貨屋さんなどで、こぎん刺しは見ていました。
可愛いな、素敵だなとは感じてたんですが、自分で刺そうとまでは思っていませんでした。」
弘前市の広報誌に、藤田記念庭園で佐藤陽子さんのこぎん展の案内が掲載されていて、一人で出かけてみた北嶋さん。
ワークショップも同時開催していたその会場で、佐藤陽子さんの作品とご本人に初めて対面しました。
「あなたこぎん好きでしょう、と陽子先生に言われたんです。
そして、そのままそのワークショップを体験させてもらったら本当に楽しかったんです。」

モドコ(模様)をひとつ刺すことで、基本的なことはほぼ理解できるのがこぎん刺しの特長。
こぎん刺しと本格的に向き合った北嶋さんは、こぎん糸や麻布(こぎん刺し用に目が粗いもの)などを買い込んで、どんどん刺していきます。

洋裁とこぎんを趣味として楽しんでいる中、不思議なことに新たなご縁が繋がっていきます。
「アイシングクッキーを習いに行った先の先生に、こぎんを始めたと話したら、友達にこぎん作家さんが居るよと紹介してくださったんです。」
既に作家としてイベント出店や委託販売をされていた方ですが、とても優しく親切で色々と教えてくださったのだそうです。
縁もゆかりもない場所だった弘前で、人に繋がるご縁にはとても恵まれていると言う北嶋さん。
こうして、津軽の手しごと「こぎん」を楽しむ日々が続きました。

屋号は「madeni」 込めた想いと作品たち




趣味としてのこぎん刺しを楽しんで、洋裁も続けていた北嶋さんは、そこからどうして作家活動へと進んだのでしょう。
きっかけは、ちょっと意外なところにありました。
友だちへの出産祝いにハンドメイドのスタイを選んだ時、自分もスタイを作ってみたいと思ったんです。
洋裁を習っていましたので、スタイを縫製することそのものはさほど難しくはありませんでした。
しかし、ただスタイを作るだけでは個性がない。
分らしさを何で表現したらいいだろうと考えた時に浮かんだのがこぎん刺しでした。

こぎん刺しに使う麻布は目が荒いので、一般的な洋裁との相性はあまりよくありません。
どんなふうに組み合わせたら良いか、考えるのは楽しくもあり難しくもありました。
「試作を繰り返す中で、知り合いからスタイとスリーパーを贈りたいとオーダーを受けました。
それを喜んでもらえたのが、とても励みになりました。」

こぎん刺し作家さんはもちろん、ベビー用品をメインとする作家さんも、弘前には既にたくさんいました。
ところが、その両方を組み合わせた作品は、意外なことにほとんど見当たりませんでした。
先輩こぎん作家さんにも、そのオリジナリティを大切にした方が良いとアドバイスを受け、本格的に作家としての活動を始めました。
「屋号を決める時、津軽弁に由来させたいなと思いました。
洋裁の先生から作業中に『までぇに作るね』と言われたことが印象的で、丁寧に作っていこうという意味もこめてmadeniと名付けました。」

こうして「こぎんスタイmadeni」が誕生。
こぎん刺しもスタイもそれぞれとても時間がかかるので、量産はできないもののコンスタントに制作活動をしています。
「スタイって赤ちゃんの頃にしか使えない、考え方によっては消耗品なんです。
そう考えたら決して安いとは言えないお値段。
だからこそスタイを手にしてくださった方が喜んでくださるように想いを込めて作っています。」
赤ちゃんだって、おしゃれする時がありますから、その時に使う言わば「勝負スタイ」としても人気があるmadeniのこぎんスタイ。
リピーターが増え、プレゼントに選ばれることも多いようです。

こぎんスタイばっかり作ってていいのかな、と揺らいだ時期もあったんですが、先輩作家さんから、他に無いものは大事にしなくちゃと励まされて続けることができました。
今ではメインとなる大事な作品のひとつです。
量産できないので、あまり多くのイベントに出店することはできませんが、インスタグラムを通して作品を発信しています。

madeniのこれから




こぎんスタイをメインとした作品を生みだすmadeni。
北嶋さんは、これからどんな活動をしていきたいと考えているのでしょう。
「大人用の物もあればいいのにという声はいただいています。
そのお声に自分らしい発想でお応えしていきたいなと日々考えているところです。」
最近制作している大人向けアイテムとして、帽子や靴下など、こぎんがチラ見えする商品も好評を得ています。

これまで、ヒロロマルシェや百貨店の催事など、無理の無いペースで出店してきたmadeni。
昨年は、念願だった「こぎんフェス」に先輩作家さんと一緒に立つこともできました。
「対面販売も、チャンスがあれば参加していきたいです。
買っていただけるかどうかよりも、作品を通してお客さまと直接お話ができるのが嬉しいです。
お客さまから新しい作品のヒントをいただくこともあるんです。

イベントならではの良さも大切にしつつ、madeniのメインターゲットとなるママの大変さへも思いをめぐらせています。
「お出かけが難しい時期ってありますよね。
そういう方のために、オンラインショップも力を入れていきたいです。
ネットだと顔が見えない分、気持ちよくお買い物をしていただけるようより丁寧に対応していきたいですね。」
今春には、イベントでのワークショップ開催も予定されている北嶋さん。
madeniはこれからも、までにまでぇに愛らしい「めご雑貨」たちを生み出してくれることでしょう。



<作家データ>

〇インスタグラム:作品や出店情報を発信しています
https://instagram.com/_ma.de.ni_

〇オンラインショップ
https://minne.com/@hmmadeni
 

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