弘南鉄道弘前学院大前駅は、かつて西弘前駅という名前でした。
西弘前駅界隈、通称西弘エリアは大学生御用達の店が数多く並ぶ、ちょっと懐かしい空気感のある学生街です。
そんな西弘にある愛らしいアパートの一角に開業した、三井鍼灸院。
まるで友達の家を尋ねる感覚で入ることができるこちらでは、本格的な鍼灸施術を受けることができます。
北海道から東京を経て弘前で開業された院長にお話を伺いつつ、実際に受けた施術もレポートします。
なぜ鍼灸師に?鍼灸師になるきっかけと修行
院長の三井政賜さんは、北海道旭川市出身。
北海道の中でも厳しい寒さで有名な街で生まれ育ちました。
高校卒業まで故郷で暮らし、大学進学を機にちょっぴり南下して、江別市で学生生活を送ります。
当時は経済学を学んでおり、その知識を生かした業種を目指して就活を始めましたが、折悪しく就職氷河期。
卒業後すぐに希望職に就くのは非常に難しい時代でした。
そこでご縁があったのは、港町・小樽。
漁業用具を扱う仕事に就いたのですが、体力もある若手ということで、実際にその道具を使う現場を体験せよと、漁師として働くことになりました。
仕事は本当に厳しく辛いものでしたが、その時に親方から言われてとても心に残った言葉があると三井さんは言います。
「お金を貰っている以上は、プロなんだと。
言い訳できないんだ、という当たり前のことですが、今でも強く意識しています。」
体力的にも精神的にも鍛えられた日々の中で、これからの自分は何をすべきか模索した三井さん。
鍼灸師という国家資格があり、そのためには専門学校や大学で学ぶ必要があるのだと知り、就職して3年後、一念発起して学び直しを決意します。
東京で暮らしていたお兄さんのところに身を寄せ、1年間しっかり学費を稼ぎ、北海道に戻って鍼灸の専門学校に入り直しました。
「鍼灸師の資格を取るための実技試験は、在学中に通過しなければなりませんでした。
必要な学問だけでなく、その実技試験に合格して、初めて国家試験の受験資格をもらうことができるんです。」
実技に関しては、飲み込みが早いだけでなく実際にスムーズにできるようになったという三井さんは、無事に国家試験を通過し、はり師免許・きゅう師免許を取得しました。
卒業後、地元北海道ではなく東京都内の大手鍼灸院に就職した三井さん。
そこには将来を見据えた理由がありました。
「まず何よりも、お客さんが多いこと。
鍼灸の施術を数多く行わないと経験が積めません。
そのためには、コンスタントにお客さんが来てくださるのが最重要だと考えていました。
札幌より都内の方が、鍼灸に通う方も多く、たくさんの経験ができる、技術を磨いていけるだろうと考えて選びました。」
実際、本当に多くのお客さんが次々と来店される人気店だったようで、同時に2名以上のお客さんに対応する場面もあったそうです。
こうして、三井さんは鍼灸師としての経験を着実に積み重ねていきました。
なぜ弘前に?移住するきっかけと決め手
道産子でありながら、東京都内の鍼灸院で数多くのお客さまに施術をする生活。
その中で、三井さんは漠然と違和感を覚えます。
「こちらもお客さまも忙しい中でしたから、お客さまが肩と言えば肩に、腰と言えば腰に鍼を打ちます。
しかしそんな状況の中では、不調の本当の原因は違う場所かもしれないな、と感じることがあっても、ゆっくり探ることも伺うこともできませんでした。」
そして、世の中はコロナ禍によって大きく変化していきました。
直接肌に触れる鍼灸は、万全の対策をとっていても感染の危険性は否定できず。
客足は鈍る一方。
先行きが不透明で、このままでいいのだろうかという不安が少しずつ膨らみます。
そんな中、自分で開業するという針路を見出します。
「実は妻と今後について話した時に、いつか子どもができても都内で子育てするイメージが湧かないと言われました。
実際自分も都会っ子ではないので、東京で家族で暮らすのは正直無理なんじゃないか、と考えました。」
黒石市出身の奥様の実家に何度かお邪魔したこともあり、青森県にも弘前市にも親しみは感じていました。
「妻が妊娠出産を迎えた時に、実家が近ければ心強いだろうし、子どもにとっても首都圏よりは青森で暮らす方が良いだろうと。
それなら今のうちに拠点を移してしまえばいい、と動き出したんです。」
移住に関しては、さほど抵抗がなかったという三井さん。
また、奥様のご実家もあるので特に支援も受けずに自分たちで住宅も見つけて引っ越して来ました。
もちろん、それですぐ開業というわけにはいきません。
生活の基盤を整え、もみほぐしリラクゼーション店に勤務して技を磨くなどの日々を越えて、2021年11月11日、晴れて三井鍼灸院は開業の日を迎えました。
鍼と灸、その魅力とは?
国家資格である「はり師免許」「きゅう師免許」を持つ三井さん。
鍼灸と聞くと、正直なんとなく古臭いイメージがあるのですが、実際はどんなものなのでしょうか。
「中国では紀元前800年頃から鍼灸が始まり、伝わってきたとされています。
効果が無かったり害があったりするものであれば、長い歴史のなかで廃れてしまうでしょう。
現在も残っている、ということに意味があると思います。」
確かに、他にも様々な治療法がある現代でも、国家資格として存在しているのは、効果効能が感じられているからなのでしょう。
「レントゲンなどで見えない部分、神経とか筋肉の中といったところに適度な刺激を与えられるというのが、鍼の良さだと考えています。
そして、ゆるやかに熱を伝えられる灸の良さも、合わせることができます。」
病気や怪我のとき、その症状に合わせて私達は診療科を選んでいます。
その選択肢の中に、鍼灸が入っても良いのかもしれませんね。
「健康な方に鍼を打っても、なんの反応もありません。
害もありません。
しかし、何らかの不調を抱える方であれば、鍼を打つことで感じる変化があるんです。」
すぐに効果を感じたり、じわじわと実感したり、個人差はあるものの良さがわかると鍼への抵抗感がなくなっていくでしょう。
「私は、鍼は刺すからには痛いものです、と正直にお話しています。
ただ、なるべく恐怖感を与えないように、会話でリラックスしていただけるように心がけていますし、手早く正確に打つことで不安にさせないようにしています。」
また、鍼と灸は対になるものと三井さんは考えていますが、熱や匂いに苦手意識のある方は、鍼だけを打つようにしているそうです。
「お客さまに無理をさせても逆効果ですから、苦手なことや抵抗があることは正直に言っていただければ、違う手段をご提案しますので遠慮なく申し出て欲しいです。」
施術を受ける側への配慮が嬉しいですね。
セールスポイントはセミオーダー施術?!三井鍼灸院の強みとは
鍼灸はもちろん、もみほぐしや足つぼ、吸玉(カッピング)、そして顔への施術である美容鍼や美顔コースもある、実に多彩な三井鍼灸院。
逆に、初めて施術を受ける時には、何を何分でお願いしていいのか迷ってしまいますよね。
「予約の際には、今気になっている症状をお知らせください。
鍼灸が良いのか、もみほぐしが良いのか、お客様ご自身での判断は難しいと思いますので、こちらでお時間や料金を提案させていただきます。」
三井さんによると、実際に痛みやしびれなどがある部分、どんな時に症状が出るかなど、実際に体を動かしたり、触れてみたりすることで適した施術を選べると言います。
「もみほぐしで体を緩めてリラックスしてから鍼灸をする、あるいは逆に鍼灸の仕上げでもみほぐす。
場合によっては鍼に電気を流す、などの施術も行います。
症状とご希望に応じて、セミオーダーのような施術ができるというのが、ある種の強みかなと思います。」
鍼灸師としての施術だけでなく、それ以外の手技でもアプローチもして組み合わせてくれる「セミオーダー施術」。
自身で症状を素人判断するのではなく、プロの方にしっかりと診ていただいてから施術してもらえるというのはとても安心できますよね。
組み合わせにより料金が変わりますが、もちろんその点も先に案内していただけます。
また、美容鍼はオプションになっていますので、不調を整えるついでにお顔のお手入れをするのもアリです。
「人間には自己回復能力があります。
鍼灸は、そのスイッチを押すようなイメージです。
自ら回復しようとする力の、お手伝いをしているのだと考えています。」
鍼灸には、すぐにスッキリする、元気になるという目に見える効果は少ないかもしれません。
しかし、体の中に確実に働きかけ、整えてくれる優しい施術だと言えるのではないでしょうか。
まとめ
今まで、痛そう怖そうと敬遠していた鍼灸ですが、今回の取材前に何度か施術を受けてみました。
刺す以上痛いですよとは言われましたが、感じ方にはかなり個人差があります。
私はそれほどではなく、刺す瞬間だけちくりとしましたが、その後は違和感もなく、そして手早いのであっという間に何十本も刺し終わっていました。
美容鍼も、顔に鍼を打ちますが、メイクしたままでも施術可能ですし、見た目に大きな影響は無いので、安心して受けることができます。
効果を実感することもでき、院長との対話も楽しいので心身ともにリラックスできました。
日々お仕事や家事などで忙しく過ごしていると、思っている以上に気を張っていて疲れやストレスでダウンしてしまいがち。
そんな時に頼れる場所があると心強いのではないでしょうか。
ずっと県内に住まわれている方でも、津軽弁に慣れない方でも安心して相談できる、移住者にも優しい三井鍼灸院。
明るく気さくな三井院長が、いつでもお待ちしています。
〇店名:三井鍼灸院
〇住所:弘前市中野1丁目6-5
レジデンス西弘前1-F号室
〇定休日:日曜日
毎週水曜・土曜は13時迄
〇公式:HP 診療メニュー詳細はこちらを参照ください
https://mitsui-shinkyu.info/
Instagram 空き状況などはこちらで随時更新
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