スタジオジブリの人気作「借りぐらしのアリエッティ」。
2010年公開の作品中で、主人公たちが暮らすお屋敷のモデルとされているのが「盛美園(せいびえん)」。
2023年10月刊行の書籍「日本の美しい洋館」表紙にも採用され、全国的な注目を集めています。
弘前市のお隣平川市にあり、車はもちろん弘前駅から弘南鉄道でも行ける場所です。
盛美園のある尾上エリアには、猿賀(さるか)公園などもあり、見どころがぎゅっと詰まっています。
今回は、盛美園のご案内をメインに、尾上周辺散策プランなども交えてご紹介します。
武家ではなく庄屋が造った大庭園
盛美園とは、盛美園(庭園)・盛美館・御宝殿の3つの総称です。
この盛美園を所有し代々守ってきたのが、清藤(せいとう)家です。
清藤家は、鎌倉時代に猿賀の地へ移り、その後も農業のみならず、経済的政治的にもこの地域のリーダーとして率いてきました。
そして時代は明治、尾上銀行の頭取も務めた清藤家24代目盛美(もりよし)は、大石武学流(※作庭の流派)の小幡亭樹宗匠を招き、実に9年もの歳月を費やして庭園を造らせました。
それが現在の盛美園庭園です。
完成したのは明治44年、池泉枯山水廻遊式の庭園は、なんと3600坪もあります。
その一角に建つ、和洋折衷様式の建物「盛美館」。
こちらは、清藤家25代目辨吉(べんきち)が建築家西谷市助に建てさせたもので、外観は明らかに洋風となっています。
しかし内装は、1階部分は和風造り、2階部分は洋風造りとなっており、日本では他に例がない様式の建築物であるとされています。
自由に入ることのできる1階部分は、畳敷きの和室が並び、外観とのギャップにとても驚かされます。
現在は2階部分を非公開としていますが、窓から見える雰囲気は、どことなく洋を感じさせます。
庭園には通路があり、敷地内を自由に歩き回ることができます。
アップダウンがあったり、細い通路も多いので、足元が不安な方やお子さまは注意が必要です。
盛美感のほぼ真向かいに四阿(あずまや)がしつらえており、そこから眺めると日本庭園の中にある西洋館という不思議な景色が広がります。
また、係員の案内でのみ入ることのできる御宝殿は必見です。
代々この盛美園を守ってきた清藤家の仏壇とも言うべき霊廟を、一般観覧できるように移設したものなのですが、その荘厳さには圧倒されます。
中央に置かれた重層入母屋造唐破風の御廟は、徳川秀光公のものを参考にしたとされ、左右には黄金の欄間、壁には蒔絵と、鮮やかで華やかな空間になっています。
中でも「さくらに孔雀」の蒔絵には、全ての蒔絵技術が施されており、日本最大の大きさであり漆芸の最高峰とされています。
これら全てが清藤家個人の所有であることから、いかに大きな庄屋であったのかを感じることができます。
弘前にも洋館は数多くありますが、和洋折衷かつ和の庭園と一緒に楽しめるのが、盛美園最大の魅力です。
さて、それでは盛美園のどの辺りが「借りぐらしのアリエッティ」で描かれているのでしょうか。
実は盛美園は、あくまでも「モデル」「イメージ」であり、正確な描写をされている訳ではありません。
映画製作以前に、スタジオジブリの社員旅行で青森を訪れた際に立ち寄り、その美しさが印象的だったために、作中の軒下などを描く際に参考にしたそうです。
小さな園の大きな秘密〜盛美園で謎解きチャレンジ〜
国の指定名勝ともなっている、盛美園。
そんな由緒正しき園内で楽しめる「謎解き」があります。
その名も「小さな園の大きな秘密」。
こちらの謎解きは、日本中様々な場所でリアル宝探しを企画・運営している、株式会社タカラッシュによるものです。
園内に散りばめられたヒントを元に、全ての謎を解いて最後にたどりついたメッセージを伝えることでゴールとなる、本格的なリアル宝探しです。
盛美園は冬季になると庭園部分を歩けなくなりますので、謎解きができるのは夏季のみとなります。
体験方法は簡単で、受付で入園料を払う際に、専用の謎解きキット(1セット1,000円)を購入し、キットの冊子の指示に従って進めます。
盛美園内をくまなく歩いてヒントを探す仕立てなので、園内を楽しんでから謎解きに挑戦となると、かなり歩くことになってしまうため、最初から謎解きしながら園内散策することをオススメします。
「借りぐらしのアリエッティ」のモデルであることを考慮してなのか、謎解きもちょっぴり可愛らしい内容ですが、手応えはなかなかのもの。
日頃あまり謎解き系のゲームなどに接していない筆者は、小一時間かかりました。
内容としては、小学生くらいならある程度自力で解けそうなレベル。
謎解きがあれば、庭園にあまり興味のないお子さんも楽しく散策できるのではないでしょうか。
お時間のある方はぜひ、謎解きしながら盛美園を満喫してくださいね。
猿賀エリア満喫プラン〜弘南鉄道で1日散歩〜
盛美園のある、平川市尾上猿賀(おのえさるか)エリアには、他にも魅力ある場所が集まっています。
広々とした駐車場もあり、車で巡ることも可能ですが、せっかくなのでローカル私鉄・弘南鉄道を利用してのんびり過ごしてみるのはいかがでしょう?
弘前駅発着で、猿賀エリアを満喫できるモデルプランをご紹介します。
弘前駅 9時台
↓ 弘南鉄道弘南線黒石行(25分程度)
津軽尾上駅
↓ 徒歩5分
①盛美園
園内散策や謎解き 休憩所でコーヒーブレイクも
↓ 徒歩1分
②四季の蔵もてなしロマン館
↓ 徒歩10分
③猿賀公園
④蓮観(はすみ)の足湯
⑤もてなし食堂
⑥さるか茶房
⑦猿賀神社
↓ 徒歩20分(もてなしロマン館の敷地内移動がオススメ)
津軽尾上駅
↓ 徒歩1分
⑧大和温泉
↓ 徒歩1分
津軽尾上駅 16時台
↓ 弘南鉄道弘南線
弘前駅 17時頃着
津軽尾上駅は、平日の11時以降と土日祝は無人駅になります。
そのため、弘前駅窓口で往復乗車券を購入すると、小銭の準備不要で便利です。
ここからは、①~⑧の魅力を、詳しく紹介していきます。
①盛美園
上記で紹介した、園内散策や謎解きを楽しんでみてください。
休憩所でコーヒーブレイクもできますよ。
○場所:平川市猿賀石林1
○電話:0172-57-2020
○営業時間:
・4月中旬〜9月末 9:00〜17:00
・10月〜11月中旬 9:00〜16:30
・11月中旬〜4月中旬(冬季営業) 10:00〜15:00
○定休日:年末年始(12月29日〜1月3日)
○公式:http://www.seibien.jp/
②四季の蔵もてなしロマン館
地場産品や手作り品などを販売しています。
「レストランけやき」はラーメンが人気。
猿賀公園へ抜ける敷地内には、造園会社の見本庭園や生け垣迷路など、お子さまが走り回って遊べるスペースがあります。
○場所:平川市猿賀石林10-1
○電話:0172-43-5610
○営業時間:
・4月〜10月 9:00〜17:00
・11月〜3月 9:00〜16:30
○定休日:年末年始
○公式:
・平川市観光協会HP https://hirakawa-kankou.com/2019/02/23/motenasi-roman/
・ぐるめぇ平川HP(レストランけやき) https://hirakawa-gurume.com/shop/keyaki
③猿賀(さるか)公園
大きな池や猿賀神社がある自然いっぱいの公園です。
池にはペダルボートがあり、特に金のスワンは人気です。
鯉の餌やり体験(1箱100円)もできます。
一般的な児童公園スペースもあるので、小さなお子さまも楽しめます。
○場所:平川市猿賀石林
○電話:0172-40-2231(平川市観光協会)
○公式:平川市観光協会HP https://hirakawa-kankou.com/2023/05/01/sarukakouen/
④蓮観(はすみ)の足湯
園内を眺めながら入れる無料の足湯です。
○場所:猿賀公園内 さるか荘前
○営業時間:7:00〜19:00
○定休日:冬季間 概ね12月〜3月
○公式:平川市観光協会HP https://hirakawa-kankou.com/2019/02/21/sarukasou-2/
⑤もてなし食堂
昼食は、さるか荘内の食堂「もてなし食堂」がオススメ。
地元の人に愛されながら惜しくも閉店した、大十食堂名物の「豊の焼きそば」が再現されて大人気です。
もっちりの太麺に、具材は玉ねぎと豚肉だけのシンプルな焼きそばには、追いソースがついてくるのも特徴です。
○場所:平川市猿賀石林94 さるか荘内
○電話:0172-57-3367
○営業時間:
・平日 11:00〜14:30
・日祝 11:00〜15:30
○定休日:水曜日
○公式:ぐるめぇ平川HP https://hirakawa-gurume.com/shop/motenashi
⑥さるか茶房
さるか荘に隣接する、平川市観光協会内にあるテイクアウトカフェ。
バナナジュースやプリンラテなどのドリンク類と、平川市のお菓子やさんから取り寄せているスイーツで、ほっこりカフェタイムが楽しめます。
天気が悪い時などは、屋内の休憩スペースでイートインも可能です。
○場所:平川市猿賀石林94 (一社)平川市観光協会内
○電話:0172-57-3367
○営業時間:9:00〜16:30
○定休日:年末年始
○公式:
・Instagram https://instagram.com/sarukasabou
・ぐるめぇ平川HP https://hirakawa-gurume.com/shop/sarukasabou
⑦猿賀神社
平安時代に造られたとされる神社です。
諸産業や交通の守護神を祀っており、地域住民のみならず津軽全域から参拝者が訪れます。
○場所:平川市猿賀石林175
○電話:0172-57-2016
○公式:http://ss701927.stars.ne.jp/
⑧大和温泉
昭和レトロな温泉銭湯。
津軽の温泉なので湯温がやや熱めです。
手ぶらセットも用意されていますので、気軽に入浴を楽しめます。
○場所:平川市中佐渡南田1-2 津軽尾上駅前
○電話:0172-57-2852
○営業時間:7:00〜23:00
○定休日:毎月15日
○公式:https://yamatoyu.net/
まとめ
今回は、盛美園を中心とした平川市猿賀エリアについてご紹介しました。
弘前駅から弘南電車に揺られて30分弱で、弘前市内とはまた違ったのどかな風景を楽しむことができます。
庭園や洋館だけを楽しんだり、公園でお子さんと思い切り遊んだり、ぜひご自身で行程をアレンジしてお出かけくださいね。
○弘南鉄道の時刻や運賃、お得なチケット情報:弘南鉄道HP https://konantetsudo.jp/
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