
こちら、筆者私物のペンケースです。
「あ、こぎん刺しだ」と思いますが…実はこぎん刺し模様の「畳縁」で作られたペンケースなのです!

こぎん刺しや津軽塗、鳩笛など津軽の工芸品をモチーフとした畳縁で作られたグッズは、弘前市の『つしま畳店』のオリジナル製品です。
今回は、『つしま畳店』の對馬陽輔(つしま ようすけ)さんにお話を伺いました。
店名 | つしま畳店 |
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場所 | 〒036-8241 |
営業時間 | - |
定休日 | - |
公式 | |
その他 | TEL: 0172-88-5893 |
住宅地の中の畳屋さん

『つしま畳店』の店舗は弘前市の桜ヶ丘、住宅地の中にあります。
店舗と言っても販売はしておらず、工房と言った方がふさわしい雰囲気。

對馬さんはここで畳や畳縁を使った小物の制作をし、畳の敷き込み作業の時には出張していることも多いそうです。
建築会社から畳屋さんに転職した理由

對馬さんは20年以上のキャリアを持つ畳職人。
独立してからは16年になります。
畳職人の業界は高齢化が進み、若手はほとんど家業が畳屋の後継者で、對馬さんのように新規参入する人はめずらしかったそうです。
最初から畳職人を目指していたわけではなく、弘前工業高校の建築科を卒業した後は建築会社に就職しました。
しかし、バブル崩壊後のあおりで会社が2年で倒産。
そんな中で見つけた東京の畳店の求人に応募すると同時に、畳職人を育成する職業訓練校に入学を決め、弘前を離れて東京へ。
畳製作技能士2級の資格を取り、職人としての下積みを経て、弘前にUターンします。
縁あって就職した弘前の畳店でも4年間腕を磨き、畳製作技能士1級も取得して独立しました。
慣れないミシンで畳縁グッズを制作し、津軽森に初出店

畳縁は一巻から10畳分が取れるのですが、実際に使うのは6畳だったり8畳だったりで、余りがロスとして廃棄されていました。
その有効活用を考えているとき、奥さんからの提案で畳縁を使った小物作りを始めました。
ミシンはまったく使ったことが無かったため、使い方を学びながら、厚みと固さがある畳縁を縫うのには大苦戦したそうです。


できあがった小物の写真をSNSに投稿していたところ、クラフトイベント「津軽森」のスタッフをしている知人から出店を勧められます。
津軽森はこの弘前近隣エリアでは最大級のクラフトイベントです。
そこに出るからには作品のクオリティーを上げないといけないと思った對馬さんは、畳縁のがま口を200個作ろうと決めました。
初出店だったので、テントからショップカードから什器からSNSアカウントまで急いで準備。
作品も200個のがま口をメインとして、くるみボタンのヘアゴム、バッグ、ござやミニ畳、くじらのマスコットなどを制作し出店しました。
畳屋でハンドクラフト品を作る人はこの辺ではいなかったので目新しく、多くの方が手に取り購入していきました。
これをきっかけに、他の青森市や弘前市近隣のイベントへも出店を重ねていきます。

オリジナル畳縁の開発
對馬さんが、いずれ津軽らしいオリジナルの畳縁も作りたいと考え始めていた頃、SNSで見た画像に衝撃を受けます。
それは畳と津軽塗の板が並んでいる写真でした。
「最初見た時はそれが津軽塗模様の畳縁に見えて、『先にやられた!』と思ったんです。でもよく見たら本物の津軽塗と畳が並んでいる写真でした。それで他の人が作る前に作ろうと思って、動き始めました」
津軽塗の畳縁は岡山県の高田織物さんに依頼しました。
若い社長さんがいる会社で、畳のイメージが変わるようなポップな畳縁も作っている会社です。
津軽塗は複雑な模様が特徴ですが、畳縁は織物のため4色までしか使うことができません。
とても難しい条件でしたが、試行錯誤を繰り返す中でなんとかできあがりました。
その後、鳩笛、こぎん刺し模様とオリジナル畳縁を作り、それぞれの色違いもできました。

オリジナルの畳縁を使った畳は旅館の広間や家庭の和室で導入されたり、小物作り、ござ作りにも使われたりしています。


インスタライブを続ける理由
つしま畳店さんのInstagramをフォローすると、積極的にインスタライブをやっている様子が流れてきます。
インスタライブは畳縁の小物を作る時に行っていて、他のハンドクラフト作家とおしゃべりしながらのコラボ配信も盛ん。
「コロナ禍になった時に、本当に外に出たり人に会ったりがなくなって、せめてどんな風に作っているかの配信でもやれたらいいかなと思って始めました。
他のジャンルの作家さんと話すことで色々刺激にもなるのもよかったです。
なかなか畳屋さんでインスタライブとかやってる人もいないけど、制作課程を見てもらうことで感情移入されて、次のイベントに来てくれることもあります。
インスタライブを始めて数年経って見に来る人も変わったけど、これからも続けていきたいですね」
畳の魅力を広めたい
たまに畳縁の小物を買ってくれたお客さんがその柄を気に入って「この縁でうちの畳できますか?」と畳の注文に結びつくことがあるそうです。
今、家に和室を作る人も減っていて、畳を作る『い草』の農家さんも、畳屋さんも減っている。
そんな中で畳の裾野を広げるような「町の畳屋さん」になりたいと語る對馬さん。
「畳は部屋の湿気を吸い、乾燥している時期にはそれを放出する特性があります。
また、部屋の嫌な匂いも吸い取り、畳の良い香りに変えてくれます。
湿度が高い日本ならではの畳は除湿機・空気清浄機も兼ねたフロアマット。
赤ちゃんやお年寄りが過ごすにもクッション性があって安心です。
そんないいところがいっぱいあることも知ってほしいですね」
と、畳の魅力を熱く語ります。
気になる方はぜひInstagramアカウントをフォローしてライブでおしゃべりを見たり、イベント出店情報をチェックして畳縁グッズを手にとって見てください。