【ゆめみるこぎん館】「古作こぎん」を聞いて、見て、着て、刺して、知ろう!




○施設名:古作こぎんの小さな展示室 ゆめみるこぎん館
○場所:青森県弘前市高屋字本宮453-1
○電話:090-5194-1278
○メールアドレス:[email protected]
○開館時間:ゆめみるこぎん館のInstagramにてご案内
○定休日:不定休
○公式
 ・Instagram https://www.instagram.com/maiko.ishita/
○予約::予約制です。電話、メール、InstagramのDMで予約ができます。
○料金(入館時にお支払いください)
 ・見学のみ:税込1,000円。中学生以下無料。
 ・体験のみ:税込1,500円(材料費込み)。
 ・見学と体験:税込2,000円





青森県の伝統工芸品「こぎん刺し」。

名刺入れやくるみボタンなど、多くの製品に施されており、ご覧になったこともあるのではないでしょうか。 

「興味はあるけどやり方が分からない」、「何から始めたらいいんだろう」という方必見!

「古作こぎんの小さな展示室 ゆめみるこぎん館」(以下、ゆめみるこぎん館)では体験だけでなく、昔のこぎんに囲まれながらこぎん刺しについて理解を深めることができます。

今回はゆめみるこぎん館とはいったいどのような展示館なのか、ゆめみるこぎん館でできる体験とは何かについて紹介します!


古作こぎんの小さな展示室

ゆめみるこぎん館を訪れて


弘前駅から岩木山に向かって車を走らせること約20分、ゆめみるこぎん館は旧岩木町にあります。

ゆめみるこぎん館には、旧岩木町で生まれ育った故・石田昭子さんが収集した古作こぎん、いわゆる昔のこぎんが多数展示されています。

運営しているのは石田舞子さん。

石田昭子さんの孫で、こぎん刺しの雑誌『そらとぶこぎん』(津軽書房)の編集者の一人でもあります。


古作こぎんを探し歩いた昭子さんの一生


以下、石田昭子さんの紹介については、石田舞子さんから伺ったお話、そして一部『古作こぎん刺し収集家・石田昭子のゆめみるこぎん』(2019,石田舞子,グレイル ブックス)から引用してまとめました。


昭和3(1928)年、昭子さんは旧岩木町高屋地区に生まれました。

20歳の頃に石田家に嫁ぎ、農作業と家事に明け暮れる毎日だったとのこと。


昭和30年代、近所の親戚から、嫁入りの際に弘前市東目屋から持ってきたという古いこぎんを見せられ、「もっとこぎんが見たい」という思いに駆られた昭子さん。

目屋地区を訪れ、1軒、1軒、「古いこぎん、持っていませんか」と声をかけながら探し歩き、多くのこぎんを集めました。

探し歩くと、その地域の特徴や違う模様を発見することができたそうです。


「こぎんが、ワごと(私を)外の世界さ連れ出してくれだ」という昭子さん。

約200枚ものこぎんを集めたそうですが、集めた大切なこぎん刺しも、決して豊かとはいえない自らの生活の足しにするため、多くを手放したそうです。

そうして、35点の古作こぎんが昭子さんの手元に残りました。


2016年3月、家族が昭子さんの米寿のお祝いも兼ねて開催した「宙とぶこぎん」展には、延べ650人が来場し、150~200年前のこぎん刺しに触れました。


2021年5月、石田昭子さんはお亡くなりになりました。

「こぎんが世界の果てまでも飛んでいって、皆さんに伝わることを願っている」という昭子さんの夢が、ゆめみるこぎん館の開館により、実現の一歩を踏み出しました。


古作こぎんを見て、聞いて、着て、感じる

こぎん刺しについて「聞く」


こぎん刺しといえば紺色の生地に白色の糸で刺されたものを思い浮かべる方も多いと思います。

この紺と白のコントラストの美しさが生まれた過程をご存じでしょうか。


津軽地方は寒冷地ということもあり綿花の栽培に適さず、さらに農民は「農家倹約分限令」により木綿の使用を規制されていたため、彼らは自家栽培の麻で作った衣類しか身に着けることができませんでした。

ただ、麻生地は目が粗いということもあり、耐久性・保温性が乏しく、津軽の農民が冬を乗り切るには適当ではありませんでした。


そこでまず衣類の補強をするために麻生地を「藍染」したそうです。

藍染された生地は強度が向上するだけではなく、藍には殺菌効果があるため虫がつきにくくなり、長く着用することができるようになります。

この藍染により紺色の生地が生まれました。


そして保温をするために、麻生地に刺し子を施すようになりました。

刺し子を施すことによって布の目から風が通りにくくなりますが、最初の頃は麻生地に麻糸で刺していたため、まだ保温性は乏しかったそうです。

しかし、刺し子を施すことにより衣類が擦り切れにくくなり、補強の一助にもなったそうです。


江戸時代後期~明治時代に入ると農民も木綿糸の入手が可能になりましたが、1808年の倹約令によると、使用できる木綿糸は白色に限られました。 

これらの過程を経て、紺色の麻生地に白の木綿糸で刺すようになったそうです。


ちなみにこの刺し子がこぎん刺しと呼ばれるようになったのは、当時の農民が着ていた麻の短い労働着が「小巾(こぎん)」と呼ばれていたからだそうです。

現在は素材や色に縛りはなく、どなたでも自由にこぎん刺しを楽しむことができます。

ただ、昔ながらの紺と白のコントラストの美しさにもぜひ触れてみていただきたいです!


古作こぎんを「見る」


ゆめみるこぎん館に展示されている古作こぎんは、ショーケースに入っていないため、どなたでも手に取ってご覧いただけます。


古作こぎんと現代のこぎん刺しの大きな違いは「生地の目の細かさ」です。

昔の布と現在使われている布に、同じ模様を刺してみると違いは一目瞭然でした。

寒さをしのぐために目の細かい生地を作っていたのかもしれませんが、この生地にこぎんを刺すなんて...と思わず声に出してしまうほど目が細かいのです。

ぜひ手に取って古作こぎんの麻生地と現在多用されている生地を比較してみてください!


また、古作こぎんの「裏」にも要注目です。

こぎん刺しの魅力の一つとしてよく挙げられているのが、「裏まで綺麗」だということ。

幾何学模様が施された衣類は、裏が表では?と思うくらい両面美しいです。 

江戸時代の農民も、刺していく途中で刺し間違いに気づくということがあったといいます。

その間違いをカバーしたことが分かる箇所もいくつかあると教えていただきましたが、自力では発見することができないくらい、美しい模様が施されています。

 古作こぎんを「着る」


実際に江戸時代の農民が着ていた衣類が展示されていますが、ゆめみるこぎん館では、なんと古作こぎんを着用することができます。

間近で、そして手に取って見ることができるというだけでも貴重な体験なのに着ることもできるなんて!


衣類の中には袖が破れていたり、肩部分が擦り切れていたりするものも。

実際に着てみることで江戸~明治時代の農民の生活を体感することができます。



 こぎん刺しを体験してみよう!


ゆめみるこぎん館ではこぎん刺しの体験もできます。

栞、ミニフレームの2種類から制作物を決め、布と糸を選びます。

「紺色の布に白色の木綿糸」と規制がかかっていた時期もありましたが、現在は多様な材料でこぎんを刺すことができます。

布と糸の色の組み合わせも楽しみながら考えてみてください! 


石田さんが細かく刺し方を教えてくださるので、こぎん刺しをやったことがない、手芸とか苦手だったんだよな、という方でも気軽に体験することができます。

その場で刺し終わらなくても、材料を持ち帰り、自宅で作業することも可能です。

刺し始めと刺し方、最後の糸処理の方法を覚えたら、あとはこぎん刺しの規則に従って刺し進めることができますよ。


 まとめ


こぎんを刺すことは農村の女性の仕事だったようです。

こぎんを上手く刺せる女性が良い嫁という基準もあったのだとか。

衣類の保温・補強のためにこぎんを刺す、いわば生活のために必要な作業でしたが、その中に美しさを見出した江戸時代の女性の活動が今でも受け継がれています。


ゆめみるこぎん館ではそんなこぎん刺しについて理解を深めることができます。

こぎん刺しの体験もすることができるため、いつでも個人的にこぎんを刺すことができるようになります!

ぜひ津軽地方の伝統工芸品「こぎん刺し」に触れてみてください。




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